先日、双眼鏡で月のクレーターを見る話を書きました。「クレーターは満月より半月のころが狙い目」と書いたのですが、ふと息子に聞いてみたくなりました。そもそも、月はどうして半月になったり満月になったりするのか。会話はこんな感じでした。

パパ:月ってなんで形が変わるか知ってる?

息子:え? 影でしょ。

パパ:何の影?

息子:太陽の影? 地球の影だっけ? 他にも何かあるかな…?

「影でしょ」。実はこれ、月の満ち欠けでいちばん多い勘違いです。そして、まったくの的外れでもありません。いい線をいっている。でも、答えは「影」ではないのです。じゃあ何なのか――親子で調べてみました。

「影」説は、いい線。でも満ち欠けの正体じゃない

まず大事な事実から。月は自分では光っていません。太陽の光を反射して光って見えているだけです。だから月は、ボールに横から懐中電灯を当てたときと同じで、いつも半分だけが昼(明るい側)、もう半分は夜(暗い側)になっています。

では、地球の影が月にかかって欠けて見えるのでは? ――それは「月食(げっしょく)」という、まったく別の現象です。月食は太陽・地球・月がほぼ一直線に並んだ満月のときだけ、しかも年に数回しか起きません。いっぽう月の満ち欠けは毎日少しずつ進みます。毎晩形が変わるのは、影が原因ではないのです。

満ち欠け:太陽・地球・月の位置関係が変わり、月の「光っている半分」のうち地球から見える割合が変わる現象。毎日少しずつ進む。

月食:満月のとき、月が地球の影に入って欠けて見える現象。年に数回の特別なイベント。

つまり息子の「影」は月食の話。毎日の満ち欠けは、影ではなく「光の当たり方」と「見る角度」で決まります。

しくみを図で見る ── 太陽・地球・月

月は約1か月かけて地球のまわりを一周します。太陽の光はいつも同じ方向(片側)からしか当たりません。すると、月が地球のまわりのどこにいるかによって、地球から見える「明るい部分」の割合が変わります。これが満ち欠けの正体です。

月の満ち欠けのしくみ 太陽の光は右から当たる。地球のまわりを回る月は、いつも太陽に向いた側(右半分)だけが光っている。新月は太陽と同じ方向、満月は太陽の反対、上弦・下弦は横の位置にあたる。下の帯は、それぞれの位置で地球から見た月の形を示す。 太陽 太陽の光 公転の向き 地球 新月 上弦の月 満月 下弦の月 地球から見た月の形(新月 → 満月 → 新月) 新月 三日月 上弦 満月 下弦
太陽の光は右から。月はいつも太陽側の半分が光っている。地球のまわりのどこにいるかで、地球から見える明るい部分の割合が変わる(概念図・距離や大きさは正確ではありません)。

新月は月が太陽と同じ方向にあるとき。光っている面が向こう側を向くので、地球からはほとんど見えません。反対に満月は太陽の反対側。光っている面がまるごとこちらを向くので、まんまるに見えます。そして横の位置に来たときが、半分だけ光って見える上弦・下弦――つまり半月です。

新月・三日月・上弦・満月・下弦 ── それぞれの顔と見える時間

満ち欠けには、昔からの呼び名があります。形だけでなく「いつ・どの空に見えるか」もセットで変わるのがおもしろいところ。代表的な月をまとめました。

月の呼び名太陽との位置見える形見やすい時間と方角
新月(しんげつ)同じ方向見えない昼間に空にあるが、太陽と一緒で見えない
三日月(みかづき)少し離れる細い右側夕方、西の低い空に短時間だけ
上弦の月(じょうげん)直角(東側)右半分夕方に南の空、真夜中ごろ西に沈む
満月(まんげつ)反対方向まんまる日没に東から昇り、一晩中見える
下弦の月(かげん)直角(西側)左半分真夜中に東から昇り、明け方に南の空

「夕方に見える半月は右側が光っていて、明け方に見える半月は左側が光っている」。これを知っていると、ふと見上げた半月から「いまは上弦か、下弦か」がすぐに分かります。前回の記事で「クレーターは半月の欠け際が狙い目」と書いたのは、ちょうどこの上弦・下弦のころのことでした。

1周は27.3日、なのに満ち欠けは29.5日 ── ふしぎなズレ

ここで、ちょっとした「へぇ」を一つ。月が地球のまわりをぐるっと360度1周するのにかかる時間は、約27.3日です。ところが、新月から次の新月まで――つまり満ち欠けがひと巡りするのにかかる時間は、約29.5日。2日ほど長いのです。なぜでしょう?

理由は、地球も止まっていないから。地球は太陽のまわりを動いています。月が地球を1周しているあいだに、地球も少し進み、太陽の方向がずれてしまう。だから月は、もとと「同じ位置関係(新月)」に戻るために、もう少しだけ余分に回らなければなりません。その差が約2日というわけです。

恒星月(27.3日):月が地球のまわりを360度きっちり1周する時間。

朔望月(さくぼうげつ・29.5日):新月から次の新月まで=満ち欠けがひと巡りする時間。

カレンダーの「ひと月(約30日)」も、もともとはこの満ち欠けの周期が由来です。

昼間にも月が見えるのは、なぜ?

子供によく聞かれるのが、「夜のものなのに、なんで昼間にも月があるの?」という疑問。これも満ち欠けで説明できます。月は新月以外、昼間もどこかの空に出ています。青空にうっすら白い月が浮かんでいるのを見たことがあるはずです。

たとえば上弦のころは昼過ぎから夕方の空に、下弦のころは午前中の空に見えます。月が見えないのは、太陽と同じ方向にあってまぶしさに紛れる新月のときと、地平線の下に沈んでいるときだけ。月は「夜だけのもの」ではないのです。

描いて、見上げる ── ゲームとのつながり

最後に、私たちのゲームの話を少しだけ。Gravity Weaver は、重力を描いて天体をたどっていくパズルです。月の満ち欠けも、つきつめれば太陽・地球・月という天体の位置関係の話。画面の中で星や月をたどっていると、本物の空でも「いまの月はどんな形だろう」と見上げたくなります。

しくみが分かると、次に月を見たとき「これは右側が光ってるから上弦、新月から1週間くらいかな」と読めるようになります。ちなみに、次の満月は2026年6月30日、次に夕方の空で半月(上弦)になるのは7月21日です。そして息子の「影でしょ」――あの答えは、いつか月食の記事を書くときの、いい入り口になりそうです。