先日、遊園地のアトラクションで「宇宙をワープする」体験をしてきました(もちろん作り物の旅ですが、なかなか本格的で楽しかった…!)。映画でもゲームでもおなじみのワープ。一瞬で遠くの星へひとっ飛び――あれは、現実にできるのでしょうか。今日は素人目線で、その「本当のところ」をたどってみます。

アルクビエレ・ドライブ(ワープ・バブル)の考え方 宇宙船を包む泡の前方で空間を縮め、後方で空間を伸ばす。船自身はその場で光速を超えず、変動する時空に乗って進む。 空間を「縮めて・伸ばして」進む 進む向き → 宇宙船(バブルの中) 後方:空間を伸ばす 前方:空間を縮める ※模式図。船はその場で光速を超えず、変動する時空に“波乗り”する
アルクビエレ・ドライブの考え方。船を速くするのではなく、まわりの空間を縮めたり伸ばしたりする(概念図)。

まず大前提 ── 光の速さは超えられない

結論から言うと、「宇宙船がエンジンをふかして光より速く飛ぶ」のは無理です。光の速さは秒速およそ30万km(地球を1秒で7周半)。アインシュタインの相対性理論によれば、質量をもつものを加速して光速に近づけるほど、さらに速くするのに必要なエネルギーがどんどん増え、光速に到達するには無限のエネルギーが要る。だから「速く飛んで光を追い越す」タイプのワープは、物理のルール上できません。

でも、SFの研究者たちは「だったら別の手は?」と考えました。船を速くするのではなく、空間そのものを操作するという抜け道です。

抜け道① 空間そのものを動かす ── アルクビエレ・ドライブ

1994年、物理学者のミゲル・アルクビエレが提案したのが「アルクビエレ・ドライブ」。アイデアはこうです。宇宙船を“泡(ワープ・バブル)”で包み、その前方の空間を縮め、後方の空間を伸ばす。すると船自身はバブルの中で静止したまま、まわりの時空に“波乗り”するように運ばれていく――というもの(上の図)。

うまいのは、船はその場では光速を超えていないこと。動いているのは「空間」のほう。だから「光速は超えられない」というルールに正面から違反しません。理論上は、見かけ上の超光速移動が成り立つのです。

アルクビエレ・ドライブ=船を加速するのではなく、まわりの空間を縮め/伸ばして運ぶ。船は局所的には光速を超えないので、相対論と真正面からは衝突しない。

抜け道② 時空にトンネルを掘る ── ワームホール

もう一つの抜け道がワームホール。遠く離れた2点を、時空のトンネルでショートカットしてしまう発想です。元になったのは、1935年にアインシュタインとローゼンが示した「アインシュタイン・ローゼン橋」。地図の上では遠くても、紙を折りたためば2点はすぐ隣――そのトンネル版だと思うとイメージしやすいです(ブラックホールと時空の話は「ブラックホールに落ちると何が起きるか」でも触れました)。

共通の壁 ── “負のエネルギー”が要る

では、なぜまだ実現していないのか。アルクビエレ・ドライブもワームホールも、「負のエネルギー(エキゾチック物質)」という、ふつうの物質とは逆の性質をもつ“何か”を必要とします。空間を縮め/伸ばしたり、ワームホールのトンネルを崩れないよう内側から押し広げたりするのに、この特別なエネルギーが要るのです。

ところが、その負のエネルギーは今のところ、まとまった量では見つかっていません(ごく微小なものは実験で確認されています)。必要量も桁外れで、ワームホールはできてもすぐ崩れてしまうと考えられています。つまり現状は、「数式の上では道がある」けれど「材料が手に入らない」という段階。SFと物理学が、ぎりぎりで隣り合っている領域です。

「光速を超えて飛ぶ」は不可能。でも「空間を曲げる/時空にトンネルを掘る」は、理論の上では道がある。ネックは、まだ手に入らない負のエネルギー。

ゲームの中で、時空を曲げる

最後に、私たちのゲームの話を少しだけ。重力の正体は、アインシュタインによれば「時空のゆがみ」。重い天体のまわりで空間がへこみ、その坂道を光や星が転がっていく――というのが現代の重力観です。私たちの「Gravity Weaver」は、まさに重力(=時空のゆがみ)を自分で描いて光を導くパズル。エンドレスモードには、太陽系の外へ一気に飛ぶ「1光年ワープ」の演出もあります。

現実のワープはまだ夢の途中。でも「絶対に無理」と「理屈の上では道がある」のあいだに、研究者たちは今も挑んでいます。次に映画やゲームでワープを見たら、その裏で空間が縮んだり伸びたりしているところを、ちょっと想像してみてください。