寝苦しい夏の夜、汗をかきながら息子とこんな話になりました。

息子:夏ってさ、地球が太陽に近づいてるから暑いんでしょ?

パパ:うーん、なんとなくそう思うよね。でも……実はいま、地球は一年でいちばん太陽から遠いんだよ。

息子:え、遠いのに暑いの!?

言われてみれば、これはとても素直な思い込みです。「近い=暑い、遠い=寒い」。ところが実際は逆で、北半球が夏のいまこそ、地球は太陽からいちばん遠ざかっています。この「一番遠い日」を遠日点(えんじつてん)といい、2026年はちょうど明日、7月7日の未明に訪れます。せっかくなので、天文素人の親子で「なぜ遠いのに暑いのか」を調べてみました。

実は今、地球は太陽からいちばん遠い

地球は太陽のまわりを、少しだけつぶれた円(楕円)を描いて回っています。だから太陽との距離は一年のなかで変化し、いちばん近づく日(近日点)と、いちばん遠ざかる日(遠日点)ができます。国立天文台の暦によると、2026年の遠日点は7月7日 2時31分(日本時間)。このとき地球と太陽の距離は約1億5209万kmにもなります。

逆に、いちばん近づく近日点は2026年1月4日で、距離は約1億4710万km。つまり――寒い1月のほうが太陽に近く、暑い7月のほうが太陽から遠いのです。「近い=暑い」の直感は、みごとに裏切られます。

地球の楕円軌道と近日点・遠日点の模式図 太陽を焦点の一つに置いた楕円軌道の上を地球が回る模式図。左端の遠い位置が7月の遠日点(約1億5209万km)、右端の近い位置が1月の近日点(約1億4710万km)。楕円のつぶれ具合は分かりやすく強調してある。 太陽 地球(いま) 7月・遠日点 約1億5209万km 1月・近日点 約1億4710万km ※楕円のつぶれ具合は分かりやすく強調しています(実際の軌道はほぼ真円に近い)
地球は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を回り、7月に遠日点(いちばん遠い)、1月に近日点(いちばん近い)を迎えます。図は分かりやすさのため楕円を強調していますが、実際の軌道はほとんど真円に近いつぶれ具合です(模式図)。

近い冬・遠い夏 ── その差は約500万km、でも「たった3%」

近日点と遠日点の差は、約1億5209万 − 約1億4710万でおよそ500万km。数字だけ聞くと「500万kmも!」と大きく感じます。ところが、地球と太陽の距離そのものが約1億5千万kmもあるので、この差は全体のわずか3%ほどにすぎません。

地球の軌道は、じつは思っているよりずっと「真円に近い」楕円なのです(上の図はわざとつぶして描いています)。だから、太陽から受け取る光や熱も、一年をとおして3%ほどしか変わりません。この程度の差では、真冬と真夏をひっくり返すような大きな寒暖差は生まれない――ここが「近い=暑い」の直感が外れる理由の入り口です。

じゃあ、なぜ夏は暑いの? ── 季節を決めるのは「地軸の傾き」

では、あの厳しい夏の暑さと冬の寒さは、どこから来るのでしょう。答えは距離ではなく、地球の「地軸の傾き」です。地球は、公転する面に対して自転の軸を約23.4度かたむけたまま、太陽のまわりを回っています。この傾きが季節をつくります。

北半球が太陽のほうへ傾く時期(=夏)は、太陽が空高くのぼり、昼が長くなります。太陽が高いほど、同じ面積の地面が受け取る光は濃くなり、照らされる時間も長い。だから気温が上がります。反対に、北半球が太陽と逆に傾く時期(=冬)は、太陽が低く、昼が短く、光は斜めに薄く広がる。だから寒くなります。季節を決めているのは「太陽までの距離」ではなく、「太陽の高さと昼の長さ」=地軸の傾きなのです。

「近いか遠いか」より、「高いか低いか」。

地球と太陽の距離は一年で3%ほどしか変わりません。でも地軸の傾きは、太陽の高さと昼の長さを大きく変える。だから、いちばん遠い遠日点の時期が、北半球ではいちばん暑い夏になるのです。

おもしろいことに、これは南半球では真逆になります。7月の遠日点のとき、オーストラリアやアルゼンチンは冬。同じ「一番遠い日」でも、地軸の傾きしだいで、北は夏・南は冬に分かれるのです。季節が距離で決まっていないことの、いちばん分かりやすい証拠かもしれません。

もうひとつの不思議 ── 遠日点では地球がいちばんゆっくり

遠日点には、もうひとつ知っておくと楽しい性質があります。太陽から遠いこの時期、地球の公転スピードは一年でいちばん遅くなるのです。逆に、太陽に近い1月の近日点のころは、いちばん速く動いています。

これはケプラーの第二法則として知られる、惑星の動きの決まりごと。ざっくり言えば、太陽に近いところでは速く、遠いところではゆっくり回る、というものです。遠くをまわるときほど、地球はのんびり進む。だからいまは、一年でいちばん「ゆっくりな地球」の上に、私たちは立っていることになります。先日のペルセウス座流星群の記事でも触れた「軌道の物語」が、ここにもつながっています。

遠日点は見えないけれど

遠日点はロケット花火のように「見える」イベントではありません。7月7日の未明、空を見上げても、いつもと同じ夏の夜空が広がっているだけです。太陽が3%遠いことも、地球が少しゆっくりなことも、体で感じることはできません。

それでも、「いま自分たちは、一年でいちばん太陽から遠いところを、いちばんゆっくり回っている」と知っているだけで、蒸し暑い夜の見え方が少し変わります。暑さの正体は距離ではなく、かたむいた地軸。息子の「遠いのに暑いの!?」という驚きは、じつは宇宙のしくみへの、いい入り口でした。今夜もきっと暑いけれど、頭のなかでは、少しだけ遠くの太陽を思い浮かべながら眠ろうと思います。