「ぼくの星座って、なんだっけ?」「8月生まれだから、しし座だね」――そんな何気ない会話から、息子がふしぎそうに聞いてきました。「じゃあ、誕生日の夜にしし座は見えるの?」。いい質問です。そして答えは、ちょっと意外。自分の誕生星座は、誕生日の夜には見えません。今日は、12星座にまつわる「へぇ」を3つ、天文学の側からほどいてみます。
ふしぎ① 占いの星座と、いま太陽がいる星座はずれている
誕生星座(星占いの星座)は、もともと「生まれた日に、空のどの星座の方向に太陽がいたか」で決められたものです。たとえば「しし座生まれ」は、太陽がしし座のあたりにいる時期に生まれた人、というわけです。
ところが、この星座と日付の対応が決められたのはおよそ2000年前。地球は、自転の軸を約2万6000年かけてぐるりと一周させる“首振り運動”(歳差)をしていて、長い年月のあいだに、星座と季節の関係が少しずつずれてきました。その差は今や星座およそ1つ分。つまり、占いで「○○座」とされる日でも、実際にその日に太陽がいるのは、ひとつ手前の星座であることが多いのです。
星占いの星座は、黄道(太陽の通り道)をきっちり12等分した“サイン”。一方、空の本物の星座は大きさも位置もバラバラ。さらに歳差のずれが重なって、「占いの星座」と「実際に太陽がいる星座」は約1つ分ずれています。
ふしぎ② 太陽が通る星座は、本当は13個ある
1922年に国際天文学連合(IAU)が空を88の星座に区切ることを決め、1930年までにそれぞれの境界線がきっちり確定しました。この境界で太陽の通り道(黄道)をたどると、おどろくことに――太陽はさそり座といて座のあいだで、もう一つの星座を横切っています。へびつかい座です。つまり天文学的には、太陽が通る星座は12ではなく13個あります。
さらに意外なのが、太陽がそれぞれの星座にとどまる日数。下の図のように、さそり座はたったの約7日間と一番短く、「13番目」のへびつかい座のほうが約18日と、さそり座よりずっと長いのです。一番長いのはおとめ座で、約45日もかかって通り抜けます。
「へびつかい座も入れて13星座にすべき」という話は、ときどき「NASAが星座占いを13星座に変えた」と広まりますが、これは誤解です。NASAはそんな宣言をしていません。13星座占い自体は、1995年に占星術師ウォルター・バーグが試みた占いがもと。星占いがずっと12星座のままなのは、古代バビロニアが暦に合わせて黄道を12等分した名残で、占星術が伝統を重んじているからです。天文学(実際に太陽が通る13星座)と、占星術(暦から決めた12のサイン)は、もともと別物なのですね。
ふしぎ③ だから、誕生星座は誕生日に見えない
ここで最初の質問に戻ります。「誕生日の夜に、自分の星座は見える?」。答えがノーなのは、こういう理由です。誕生日のころ、自分の星座は太陽とほぼ同じ方向にあります。太陽と同じ方向の星座は、太陽といっしょに昼間の空に昇ってしまう。つまり、まぶしい太陽にかき消されて、夜には見えないのです。
自分の誕生星座をちゃんと夜空で見たいなら、誕生日からおよそ半年後――太陽が反対側にまわり、その星座が真夜中に空高く昇る、反対の季節を待つのがいちばんです。
しし座は春の星座。8月生まれのしし座にとって、誕生日のころは太陽がしし座の近くを通っているので、夜には見えません。しし座が夜空の主役になるのは、半年ほど先の3〜5月の宵の空。目印は一等星レグルスと、たてがみを描く「ししの大鎌」(裏返したクエスチョンマークの形)です。
星座の帯=太陽系の“盤面”
最後に、ゲームの話を少しだけ。12(13)の星座が並ぶ太陽の通り道=黄道は、言いかえれば地球が太陽をまわる軌道の面です。そして太陽系の惑星たちも、ほぼ同じ平面に行儀よく並んで公転しています。星占いの星座が空をぐるりと一周の帯になっているのは、私たちが太陽系という一枚の“盤面”の上にいるからなのですね。
私たちのゲーム「Gravity Weaver」は、重力を自分で描いて天体の通り道(軌道)をつくるパズルです。星座の帯を眺めるとき、その裏で太陽系がひとつの平面の上をまわっていることを、ちょっと思い出してみてください。そして今度、お子さんに「ぼくの星座、見える?」と聞かれたら、ぜひ「半年後にね」と答えてあげてください。
