移動の途中、なにげなく西の空を見上げたら、ひときわ明るい星がひとつ。金星でした。とにかく明るい。そして、そのすぐ少し下に、小さいけれどはっきりとした光がもうひとつ ── 木星です。先日、金星と木星が接近していると書いておきながら、その日は曇りやビルの合間でひとつも見つけられず、しかも空を確認した時間が遅すぎました。だから今回やっと見られて、ちょっとうれしかったのです。

この「やっと見られた」には理由があります。宵の明星・金星は、見つけるのは簡単なのに、うかうかしているとすぐ見逃してしまう星なのです。今日は、その「見逃さないコツ」を、自分のしくじりも込みでまとめます。

宵の明星・金星の見え方と時間 日の入り後、西の低い空にある金星は時間とともに高度を下げて沈む。空が暗くなりはじめる日没後30〜45分ごろが見つけやすい。 西の空:金星は時間とともに低くなる 西の地平線 ※東京・6月中旬のおよその目安 金星 少し下に木星 日没45分後 いちばん高い・狙い目 20時すぎ 21時半ごろ沈む
金星は日の入り後の西の低い空。時間がたつほど高度が下がり、やがてビルや地平線に隠れます(概念図・正確な縮尺ではありません)。

宵の明星は「すぐ沈む」星

金星はいま、日の入り後の西の空に見える「宵の明星」です。問題は、その金星が地平線に近い低い空にいること。低い星は、時間がたつほどぐんぐん高度を下げ、やがて地平線の下へ沈んでしまいます。

東京の場合、6月中旬の金星が沈むのは21時半ごろ。つまり21時を回ったあたりから、金星はもう西の低い空でビルや山に隠れやすくなります。私が先日見つけられなかったのは、曇りやビルのせいもありますが、いちばんの原因は確認した時間が遅すぎたこと。低い星の宿命でした。

見るなら、日の入り後のおよそ1時間

では、いつ見ればいいのか。ねらい目は日の入りのあと、空が暗くなりはじめる30〜45分後から、1時間ほどです。空が明るすぎると金星も見えにくく、かといって遅すぎると低くなって沈んでしまう。その“ちょうどいい時間帯”が、日没直後の短い窓なのです。

東京では、日の入り45分後の金星の高さは6月中旬がいちばん高くなり、それでも地平線から20度ほど。腕をいっぱいに伸ばしたこぶし2つぶんくらいの高さです。決して高くはないので、「早めに・西が開けた場所で」が合言葉になります。

方角:日の入り後の西〜西北西の低い空。

時間:日没の30〜45分後から1時間ほど。遅いほど低くなるので、早めが有利です。

場所:西の地平線が開けたところ。ビル・山が低い空をさえぎらない方向を選びます。

金星を目印に、木星を探す

金星は、月をのぞけば夜空でいちばん明るい星(マイナス4等ほど)。だから、西の低い空でまず目に飛びこんでくる強い光が金星だと思って、ほぼ間違いありません。見つけ方の順番としては、まず金星、それを目印にまわりを見るのがコツです。

この日(6月中旬)は、そのすぐ少し下に、もうひとつ明るい点 ── 木星が見えていました。金星も木星も自分では光っておらず、太陽の光を反射しているだけ(くわしくは「光る星と光らない星」に書きました)。ただし、6月上旬に大接近した金星と木星はその後日ごとに離れ、木星は7月29日に太陽と同じ方向(合)を迎えるため、7月の夕空ではもう見えません。なぜ近くに並んで見えるのか、その正体は「金星と木星が「くっつく」夜」でくわしくたどっています。

この夏の見頃と、月との共演

うれしいことに、宵の明星・金星はこの夏のあいだ、夕方の西の空で長く楽しめます。日の入り後しばらく見やすい時期が夏まで続くので、一度逃しても、晴れた夕方にまたチャンスがめぐってきます。

6月18日ごろには、細い月が金星のそばにやってきて、空の高いほうから月・金星・木星・水星が斜めに並ぶ様子が見られました。この先の見どころは、8月15日ごろの「東方最大離角」(金星が太陽からいちばん離れて見える日)と、9月中旬の最大光度。そして毎月一度、細い月が金星のそばを通る夕方は、月という目印があるぶん見つけやすい狙い目です。やはり日没後の早い時間に、西の空をのぞいてみてください。

金星を見つけたいなら、ポイントはひとつ ── 遅くならないうちに、西の空を見上げること。日の入り後の短い1時間が勝負どきです。

ゲームの中で、光を導く

少しだけ自分たちのゲームの話を。Gravity Weaver は、重力を描いて光を導き、太陽系を越えていくパズルゲームです。星の動きを読み、タイミングを合わせて軌道を描く ── そんな遊びを作っていると、本物の空で「金星が沈む前のわずかな時間をねらう」のも、どこか似た面白さに感じられます。

今夜、もし西の空がひらけていたら、暗くなりはじめた空を早めに見上げてみてください。とびきり明るいひとつの光と、その近くのもうひとつ。沈んでしまう前のその眺めは、今の季節ならではのものです。