夏の宵、空を見上げると、ひときわ明るい星が3つ、大きな三角形に並んでいるのに気づきます。これが「夏の大三角」。夏の星空でいちばん見つけやすい目印で、ここを起点にすると周りの星座もたどりやすくなります。今日は、この3つの星の見つけ方と、七夕にまつわる話を素人目線でまとめます。
三角形をつくる3つの星
夏の大三角は、別々の星座にある3つの一等星を結んだ形です。星座そのものではなく、星をつないでできる目印(こういう図形を「アステリズム」と呼びます。星座を形作る星とラインでも触れました)。
| 星 | 星座 | 明るさ(約) | 距離(約) |
|---|---|---|---|
| ベガ | こと座 | 0.0 等 | 25 光年 |
| アルタイル | わし座 | 0.8 等 | 17 光年 |
| デネブ | はくちょう座 | 1.3 等 | 1400 光年以上(諸説) |
明るさの順でいうと、いちばん明るく見えるのがベガ、次にアルタイル、そしてデネブ。等級は数字が小さいほど明るく、3つとも「一等星」に数えられる明るい星です(数値は国立天文台などの公開値)。
見つけ方 ── まずベガを探す
探すコツは、いちばん明るい星から。7〜8月の20〜22時ごろにはほぼ頭上まで高く上りますが、6月の宵なら、まず東の空を見上げてみてください。そこでいちばん強く青白く光っているのがベガです。時間がたつほど高く上るので、夜が更けるほど見やすくなります。ベガを見つけたら、そこから少し離れた2つの明るい星を探します。
ベガ:3つの中でいちばん明るい、青白い星(こと座)。
アルタイル:ベガから南東の低めにある明るい星(わし座)。
デネブ:ベガの北東側、三角形のもう一つの頂点(はくちょう座)。
この3つを結ぶと、細長い大きな三角形になります。さらに、三角形の中を天の川が流れています。街なかでは天の川は見えにくいですが、一等星のベガ・アルタイル・デネブは都会でも見つけやすいのがうれしいところ(街での探し方は都会で星を見る方法に書きました)。見えはじめる時期は夏ですが、宵に見やすいのは7月から11月ごろまでと長く、旧暦の七夕にあたる8月上旬は特に見やすくなります。
七夕の星 ── 織姫と彦星
夏の大三角は、七夕の物語とも深くつながっています。ベガが織姫(おりひめ)、アルタイルが彦星(ひこぼし)。2つの星は天の川をはさんで向かい合っていて、一年に一度だけ会える――という言い伝えです(中国では織女・牽牛と呼ばれます)。もう一つの頂点デネブは「はくちょう座」の星。物語で橋をかけるのは本来カササギの群れ(「カササギの橋」)ですが、白鳥のデネブはちょうど天の川の中、織姫と彦星のあいだに位置しています。天の川に翼を広げる白鳥が2人をつなぐ橋に見える――そんなロマンチックな見立ても、夜空を見上げると腑に落ちます。
では、織姫と彦星は本当はどれくらい離れているのか。ベガとアルタイルの間は約14.4光年。光の速さでも約14年半かかる距離です(光年の話は1光年って何キロ?に)。物語のように一年で会いに行ける距離ではない、というのが天文の答えです。それでも夜空では仲良く並んで見える――そのギャップも、夏の大三角の味わいかもしれません。
同じ「一等星」でも、距離は桁違い
ここが個人的にいちばん「へぇ」と思ったところ。ベガ(25光年)とアルタイル(17光年)は、宇宙のスケールでいえばご近所です。ところがデネブは、観測によって幅がありますが1400光年以上も彼方にあるといわれます。ご近所の2つと比べて、何十倍も遠い。
それでもデネブが「一等星」として明るく見えるのは、桁違いに明るい星だから。デネブは「白色超巨星(A2Ia型)」という、とても大きく強烈に輝くタイプの星です。いっぽうベガとアルタイルは、太陽と同じ「主系列星」の仲間(恒星の種類は光る星と光らない星でも触れました)。同じ三角形の頂点でも、近くの普通の星と、はるか彼方の超巨星が混じっている――夜空の見かけは、奥行きをまるで感じさせません。
夜空を立体で見上げる
最後に、私たちのゲームの話を少しだけ。Gravity Weaver は、重力を描いて光を導き、太陽系の外へ進んでいくパズルです。画面の中の星は、近いものも遠いものも奥行きをもって並んでいます。夏の大三角も同じで、平らに並んで見える3つの星は、実際には25光年・17光年・1400光年以上とバラバラの奥行き。
今夜、もし頭上に大きな三角形を見つけたら、その3つの星までの「遠さ」を少し想像してみてください。同じ明るさに見えても、光が旅してきた時間はまるで違う。夏の夜空が、ぐっと立体的に見えてくるはずです。
