先日キャンプで星を見ていたとき、息子が流れ星を見つけて、そのあとで聞いてきました。「流れ星って、なんで光るの?」

「空気とこすれて、燃えてるんだよ」と答えかけて、口が止まりました。ほんとうにそうだっけ? 自分でも確かめたことのない説明を、そのまま渡そうとしている気がしたのです。

帰ってから調べてみたら、案の定でした。「こすれて燃える」という言い方は、あまり正確な表現ではないのだそうです。しかも、ほんとうに起きていることのほうが、ずっと不思議でした。

「こすれて燃える」では説明しづらい

まず、流れ星が光っているのは上空100km前後です。地上ではありません。この高さがどういう場所かというと、空気がほとんど無い世界です。

ここで「摩擦」という言葉が引っかかります。流星電波観測国際プロジェクトの解説は、摩擦という説明をはっきり退けています。

「地球大気との摩擦によって発生するエネルギーで光る」と表現されることがありますが,あまり正確な表現とはいえません.そもそも「摩擦」は例えば道路と車のタイヤなど,物質が連続しているところで起きます.ところが,流星が光る場所は……その場所での大気は薄く(大気分子の間隔が広く)摩擦で説明するには若干無理があります.

— 流星電波観測国際プロジェクト「流星現象のしくみ」(…… は引用者による中略)

道路とタイヤ、という例えが分かりやすいと思いました。手のひらをこすり合わせると温かくなるのも、手と手がすきまなく触れ合っているからです。ところが上空100kmの空気は、分子がまばらに飛んでいるだけで、そもそも「面と面がこすれる」という状況になっていない。

実際に起きていること ── 空気が押し縮められる

では何が起きているのか。鍵は速さです。

もうすぐやってくるペルセウス座流星群を例にすると、そのちりが地球の大気に飛び込む速さは秒速59km(NASA)。音速がおよそ秒速0.34kmですから、音の170倍以上の速さということになります。

これだけ速いと、前にある空気はよけている暇がありません。押しのけられるのではなく、その場で押し縮められます。空気は急激に圧縮されると温度が上がる(自転車の空気入れが熱くなるのと同じ理屈です)ので、ちりの前面に高温の領域ができます。

この熱でちりの表面は溶け、削られて剥がれていきます。そして国立天文台の解説によれば、そこから先が本番です。

地球大気に高速で飛び込んできた小さな塵粒が、衝撃加熱によって高温となり、塵粒から溶解した成分と、もともとの大気成分とが混じり合い、数千度という高温プラズマとなって発光する

— 国立天文台「分光宇宙アルバム」第9回 流星のスペクトル

つまり、光っているのはちりそのものではありません。ちりから剥がれた成分と、まわりの空気とが混ざり合って高温のプラズマになり、その気体が光っているのです。

光っているのは、石ではなく気体

「気体が光っている」というのは、想像しにくい話かもしれません。でもこれは、実際にスペクトル(光を波長ごとに分けたもの)を撮れば確かめられます。

同じ国立天文台の解説によると、流星のスペクトルにはカルシウム・マグネシウム・ナトリウム・鉄の輝線が現れます。これは流星本体、つまり宇宙から来たちりに含まれていた成分です。そしてそれと並んで、窒素や酸素の輝線も目立ちます。こちらは地球の大気の成分です。

宇宙から来た原子と、地球の空気の原子が、同じ光の中に一緒に写っている。流れ星の光は、その両方が混ざったものだということです。息子には「宇宙のかけらと、地球の空気が、混ざって光ってる」と説明しました。「燃えてる」より、ずっと本当らしい話だと思います。

ちなみに、私たちが日常で言う「燃える」は、ふつう酸素と結びつく反応(酸化)を指します。流星の発光はそれとは別のしくみなので、その意味でも「燃えている」は言葉のあやです。

砂粒が、なぜあれほど光るのか

もうひとつ意外だったのが、流れ星のもとになるちりの小ささです。

先ほどの流星電波観測国際プロジェクトの解説では、大きさは数ミリから数センチ程度、重さは1円玉より軽いものがほとんどで、明るい流星でも10g程度とされています。1円玉は1gです。あんなに派手に空を横切るのに、正体は砂粒やビーズくらいのものだということになります。

なぜそれで光るのか。答えは、やはり速さにあります。運動エネルギーは ½ × 質量 × 速さ² で決まり、速さのほうは2乗で効いてくるからです。

1gのちりが秒速59kmで飛んでいるときの運動エネルギー

½ × 0.001kg × (59,000m/s)² ≒ 約1.7メガジュール

これは 100Wの電球を5時間近く 灯せるだけのエネルギーです。

それが1秒に満たない時間で解放される。だから、たった1gの砂粒でも、遠く離れた地上から見えるほど明るく光るわけです。軽さを、速さが桁違いに補っている。

どのくらいの高さで光っているのか

発光する高さは、資料によって少し幅があります。正直にそのまま書くと、こうです。

出典光りはじめる高さ消える高さ
流星電波観測国際プロジェクトおよそ100km(90〜110km程度)まれに90km以下
アストロアーツ100〜200kmくらい70〜90kmくらい

幅はありますが、おおむね100km前後と思っておけばよさそうです。そしてこの100kmという数字には、もうひとつ意味があります。国際航空連盟(FAI)は高度100kmを宇宙との境界としていて、これを提唱者の名前からカーマンラインと呼びます。

つまり流れ星は、ほとんど宇宙といっていい高さで光っているということです。旅客機が飛ぶのはせいぜい高度10km、エベレストでも8.8km。並べてみると、その差が分かります。

流れ星が光る高さ 高度を縦軸にとった図。エベレストは8.8km、旅客機は約10kmで、いずれも地表近くにとどまる。宇宙との境界とされるカーマンラインは高度100km。流れ星が光るのは90〜110km付近で、ちょうどカーマンラインをまたぐ高さになる。 地表(高度0km) 25km 50km 75km 100km 125km 流れ星が光る 90〜110km カーマンライン(宇宙との境界・高度100km) 旅客機 約10km エベレスト 8.8km
流れ星が光るのは、宇宙との境界とされる高さのあたり。旅客機やエベレストは、図のいちばん下に貼りついてしまう。

秒速59kmの群が、もうすぐ来る

この話を調べていていちばん嬉しかったのは、もうすぐ実物を確かめられることでした。ペルセウス座流星群です。

母天体はスイフト・タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)で、太陽のまわりを約130年かけて回っています(国立天文台)。その軌道に残されたちりの帯を、毎年8月に地球が横切る。そのちりが秒速59kmで飛び込んできて、上空100kmで光る、というわけです。

2026年の極大は8月13日11時ごろと予想されていて、見るなら8月12日の夜から13日の未明が本命です。しかも今年は13日が新月で、月明かりがまったくありません。観察の段取りはペルセウス座流星群2026の記事にまとめてあります。

今年は、息子に見せながら言えることが増えました。あれは石が燃えているんじゃなくて、押し縮められた空気で熱くなって、剥がれた原子が空気と混ざって光っているんだよ、と。たぶん長すぎて途中で飽きられますが、「こすれて燃えてる」で終わらせなくてよかったと思っています。

まとめ

調べてみて分かったことを、短く並べておきます。

• 「摩擦で燃える」はあまり正確ではない。上空100km付近は空気が薄く、摩擦が前提とする状況になっていない

• 実際は、前方の空気が押し縮められて高温になる(衝撃加熱)

• 光っているのは石ではなく、剥がれた成分と大気が混ざった数千度のプラズマ

• スペクトルにはカルシウム・マグネシウム・ナトリウム・鉄(宇宙側)と窒素・酸素(地球側)が並んで写る

• もとのちりは数ミリ・1g以下。それでも光るのは、エネルギーが速さの2乗で効くから

子どもの「なんで?」は、たいてい自分がちゃんと分かっていないところを正確に突いてきます。今回もそうでした。