「隕石(いんせき)って、どこから来るの?」 ── 子供にそう聞かれて、一緒に考えはじめました。面白いのはここからで、答えを教える前に、子供のほうが次々と予想を立てはじめたのです。「星のかけら?」「大きな火山が爆発して、岩が宇宙に飛び出したのかな?」「それとも、星どうしがぶつかって割れたとか?」

調べてみると ── どの予想も、びっくりするくらい“いい線”をついていました。今日は、この子供の予想を一つずつ答え合わせしながら、隕石がどこから来るのかをたどってみます。

隕石の主な源 太陽、火星と木星の間の小惑星帯(小惑星どうしが衝突して割れる)、そこから宇宙を旅して地球へ落ちる隕石のイメージ。 隕石の多くは「小惑星帯」から 太陽 小惑星帯(ぶつかって割れる) 宇宙を旅して地球へ 地球に落ちる=隕石
隕石の主な源のイメージ(概念図)。火星と木星の間の「小惑星帯」で小惑星どうしがぶつかって割れ、その破片が宇宙を旅して地球へ落ちると隕石になります。月や火星から来るものもあります。

まず ── 流れ星と隕石は、別もの

答え合わせの前に、言葉を整理させてください。よく混ざってしまう三つです。

流れ星(流星)は、宇宙の小さなちりや砂粒が地球の大気に飛び込み、猛スピードでこすれて燃え上がる「光」のこと。光るのはほんの一瞬で、ほとんどは上空で燃え尽きてしまいます。

隕石は、その中でも燃え尽きずに地上まで届いた「石(や金属)」のこと。つまり「流れ星のうち、地面に落ちてきた生き残り」が隕石です。

そして流星群は、地球が彗星(すい星)の通り道に残されたちりの帯を横切るときに、たくさんの流れ星が見える現象(くわしくは「2026年の流星群カレンダー」もどうぞ)。彗星のちりはとても小さいので、流星群のときに大きな隕石が降ってくることは、ほとんどありません。

流れ星:ちりが大気で燃える「光」。隕石:燃え残って地上に届いた「石」。流星群:地球が彗星のちりの帯を横切って、流れ星がたくさん見える日。

予想①「星のかけらなの?」 ── ほぼ当たり(でも“光る星”ではない)

子供の最初の予想、「星のかけら?」。これはほぼ当たりです。隕石の多くは、小惑星(しょうわくせい)のかけら。小惑星は、火星と木星のあいだに数えきれないほど集まっている、小さな岩の天体です。その意味で隕石は、たしかに「星(天体)のかけら」なのです。

ただし一つだけ。太陽のように自分で光る星(恒星)のかけらではありません。恒星はガス(プラズマ)でできた巨大な火の玉で、岩のかけらは出てきません。「光る星と光らない星」のちがいは「光る星と光らない星」でも書いたとおり。隕石は“光らない星”=岩の天体のかけら、というわけです。

予想②「火山が爆発して飛び出した?」 ── これがすごく鋭い

次の予想、「大きな火山が爆発して、岩が宇宙に飛び出した?」。これは思わずうなりました。

まず、地球の火山では、岩を宇宙まで飛ばせません。地球の重力をふりきって宇宙へ出るには秒速約 11.2 km(「脱出速度」)という途方もない速さが必要で、火山の噴石はそこまで速くなれず、必ず落ちてきます。

ところが ── 月や火星では、本当に「岩が天体から宇宙へ飛び出す」ことが起きています。大きな小惑星が月や火星にドカンと衝突すると、その衝撃で地面の岩が宇宙まで吹き飛ばされ、長い旅のすえに地球へ落ちてくる。これが月隕石・火星隕石です。数は少ないけれど、ちゃんと見つかっています。「岩が天体から宇宙へ飛び出す」という子供の発想は、まさに本当に起きていることでした。

しかも面白いことに、火星隕石の中には火星の火山でできた岩もあります。火山で生まれた岩が、別の衝突で宇宙へ放り出され、地球まで届いた ── そう考えると、「火山」という予想も半分は当たっていたのです。

予想③「星どうしがぶつかって割れた?」 ── 大正解

そして三つめ、「星どうしがぶつかって割れた?」。これは ── 大正解です。

隕石のいちばんの源は、まさにこれ。小惑星帯では、小惑星どうしがときどき衝突して割れ、こまかな破片を宇宙にばらまきます。その破片の一部が、長い時間をかけて地球の近くまで来て、大気に飛び込み、燃え残ったものが隕石になる。子供は主な答えを言い当てていました。

「本当に小惑星から来てるの?」を確かめたのが、日本の探査機はやぶさ・はやぶさ2です。小惑星「イトカワ」「リュウグウ」まで行って砂粒を持ち帰り、その成分が隕石とよく似ていることが分かりました。隕石が小惑星のかけらだという話を、日本の探査機が“現地”で裏づけたのです。

ちなみに、流星群の多くは彗星生まれですが、12 月のふたご座流星群だけは母天体が小惑星ファエトンという珍しい例外(「ふたご座」の図鑑もどうぞ)。空に降る小さな光にも、それぞれの“ふるさと”があるのですね。

予想④「道端の石に、隕石がまざってるかも?」 ── 小さなスケールでは本当

最後に子供が言った、「道端に落ちてる石に、隕石がまざってるかもね」。これも ── 侮れません。

隕石は地球のどこにでもランダムに落ちます。だから「その辺に落ちている」可能性はゼロではない。実際、2020 年 7 月 2 日の未明、関東の上空に大きな火球が流れ、その破片が千葉県(習志野・船橋)でマンションの敷地などから見つかりました。これが習志野隕石(回収されたのは合わせて約 350 g、種類は「H5 普通コンドライト」)。住民が“家のまわり”で気づいた、まさに身近な実例です。

もし「これ隕石かな?」という石を見つけたら、簡単な見分け方があります。多くの隕石は鉄を含むので磁石にくっつく/同じ大きさの石よりずっしり重い/表面が大気で溶けてできた黒い皮(溶融皮殻)に覆われていることがある。とはいえ「隕石かも!」のほとんどは、ただの地球の石。当たればものすごくラッキー、くらいに思っておくのがちょうどいいです。

そして、本当にすごいのはここから。目に見えないほど小さな「宇宙のちり(マイクロ隕石)」は、実は身のまわりに本当にまざっています。屋根の上や雨どいにたまったゴミから、宇宙から降ったちりを採集している人もいるほど。つまり「身近な石やちりに宇宙のかけらがまざってる」という子供の予想は、小さなスケールでは正真正銘ホントだったのです。

隕石は、46 億年前からの手紙

もう一つだけ。多くの隕石(コンドライトと呼ばれる種類)は、太陽系が生まれたころ(約 46 億年前)の物質を、ほとんどそのまま閉じ込めています。惑星のように溶けて作り変えられていないので、太陽系のいちばん古い「タイムカプセル」なのです。手のひらにのる小さな石が、地球よりも古い時間の記憶を持っている ── そう思うと、ただの石には見えなくなってきます。

ゲームの中で、天体を導く

少しだけ自分たちのゲームの話を。Gravity Weaver は、重力を描いて光を導き、太陽系を越えていくパズルゲームです。画面の中では小惑星や隕石をモチーフにしたギミックも登場します。「この岩はどこから来たんだろう」と一度思ってから空を見上げると、流れ星の一筋が、ぐっと遠い場所からの“便り”に見えてきます。

次に流れ星を見たら ── そのもとは、何億年も宇宙を旅してきた小さなかけらかもしれません。そして今度その辺の石を拾ったら、ほんのちょっとだけ、「宇宙から来た一粒がまざってないかな」と疑ってみてください。子供と空を見上げる時間が、少しだけ宝探しになります。