先日、初心者向けの天体望遠鏡の選び方を本気で調べて、我が家は「池田レンズ工業 リゲル60」を選びました。今回はその続編 ── 実際に千葉・勝浦のキャンプに持って行って、親子で使ってみた正直なレビューです。
先に白状すると、望遠鏡をのぞきながらの写真は、結局うまく撮れませんでした。でも、それを補って余りあるものが見えた夜でした。順番に書いていきます。

リゲル60はどんな望遠鏡か
まずスペックのおさらいです。リゲル60は、昔ながらの屈折式(アクロマート)で、口径60mm・焦点距離700mm(およそ F11.7)。付属のアイピースで35倍と117倍が使えます。微動ハンドル・天頂ミラー・スマホ撮影アダプタ・入門ガイドブックが付いて、架台は初心者に扱いやすい経緯台。実売はおよそ2万円台後半でした(価格は変動します)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 形式 | 屈折式(アクロマート)/経緯台 |
| 口径 | 60mm |
| 焦点距離 | 700mm(約 F11.7) |
| 倍率 | 35倍・117倍(付属アイピース) |
| 付属 | 微動ハンドル/天頂ミラー/スマホアダプタ/ガイドブック |
| 実売 | およそ2万円台後半(購入時点) |
いわゆる「口径は控えめだけど、作りが素直で子どもと扱いやすい入門機」という位置づけです。第1弾で書いたとおり、我が家は最高スペックより「子どもと一緒に使えること」を優先してこれを選びました。今回はその判断が正解だったかどうかの、現地での答え合わせでもあります。
この記事は自費で購入した実機のレビューです。メーカーや販売店からの提供・依頼は受けておらず、良かった点も気になった点もそのまま書いています。リゲル60は「我が家が選んだ一例」であって、唯一の正解という意味ではありません。
組み立て・設置
組み立ては、思っていたよりずっと簡単でした。三脚を開いて、鏡筒を架台に載せて、天頂ミラーとアイピースを差し込む。説明書を見ながらでも、キャンプ場に着いてから数分で観測体制になりました。軽いので、車から観察ポイントまでの移動も苦になりません。
経緯台(上下・左右にそのまま動く方式)は直感的で、微動ハンドルを回すと目標をゆっくり追える。この「難しい設定がいらない」感じは、子どもと使ううえで本当にありがたいポイントでした。
ベガを見た ── 恒星は「点」、でも青白く鋭い
この夜、最初にきちんと導入できたのが、頭上高くに輝く夏の大三角の一角、こと座のベガでした。
正直に言うと、恒星は望遠鏡で拡大しても「点」のままです。星は遠すぎて、どんな望遠鏡でも面積を持って見えることはありません。これはリゲル60の欠点ではなく、天体望遠鏡そのものの前提。ここは期待値を合わせておいた方がいい部分です。それでも、視野の中央でくっきりと青白く鋭く光るベガは、肉眼で見るのとはまた違う存在感がありました。「あの光を、自分の望遠鏡で狙って捉えた」という手応えは、最初の一台ならではの喜びです。
ひとつ現場で分かった正直な弱点。アイピースをのぞくこと自体は、天頂ミラーのおかげで楽でした。きつかったのはその手前 ── ベガのように頭の真上に近い星に狙いを定める(視野に入れる)作業のほうです。三脚が低いぶん、高い空へ鏡筒を向けてファインダーで導入しようとすると、大人はかなり無理な姿勢でかがむことになる。ところが ── これが思わぬ形で解決しました。
とはいえ正直に書くと、頭の真上に近いベガの導入は、小3の息子でも「しゃがんで見上げる」格好になりました。ほぼ真上ばかりは、さすがに子どもでも楽な姿勢とはいかないようです。それでも、腰を深く折らないと届かない大人に比べれば、背の低い息子のほうがずっと無理なくこなせて、微動ハンドルを回しながら星を視野の中央へ追い込み、すっかり夢中になっていました。結果として、この夜のベガの観察はほぼ息子が主役。天頂付近こそ全員にとって窮屈でしたが、低い三脚は総じて子どもの体格に合っている ── 「子どもと一緒に使う」観点で選んだ判断は、現地でも正解だったと感じます。
スマホ撮影に挑戦して、撮れなかった
付属のアダプタで、Pixel 10 Pro Fold のメインカメラをアイピースに合わせて、月や星を撮ろうとしました(望遠鏡越しに撮るコリメート法です)。
結論から言うと、この夜は満足に撮れませんでした。レンズとアイピースの中心をぴったり合わせるのが難しく、少しずれると視野が真っ暗な丸に沈む。ピントと明るさの追い込みにも手間取り、恒星のような小さな点光源は、そもそもスマホでは相当に手強い相手でした。ここは完全に、次回への宿題です。恒星より、まずは面積のある月を、しっかり固定して狙うのが現実的だと痛感しました。
【後日追記】この宿題は、2026年7月29日の満月で答え合わせができました。書いたとおり月を狙ったら、あっさり撮れたのです。その写真と、同じ夜に付属の117倍で失敗した話は倍率を上げたら、見えなくなったにまとめています。
街では見えない星が、勝浦では溢れていた
望遠鏡の話から少し離れます。この夜いちばん心を動かされたのは、実は肉眼の空でした。
ふだん住んでいる街では、夜空に星なんてほとんど見えません。それが勝浦の暗い空では、見上げた瞬間に「星ってこんなにあるのか」と声が出るほど、無数の星が広がっていました。星の数そのものは街でも田舎でも同じで、違うのは空の暗さだけ。街の明かりに負けて見えなかった星が、暗い空では一気に姿を現します(都会の空の限界等級の話はこちら)。

星が多すぎて、逆に星座が難しい
親子で星座の話をしようとして、ここで面白い壁にぶつかりました。星が多すぎて、かえって星座の形が見つけにくいのです。街では明るい星しか残らないので形を拾いやすいのに、暗い空では目印の星が無数の星に埋もれてしまう。ぜいたくな悩みですが、これは本当に起こります。
そこで、明るい星だけを結ぶことにしました。まず夏の大三角のベガ・アルタイル・デネブ。この3つは飛び抜けて明るいので、無数の星の中でも迷いません。そこを起点に、線を伸ばしていく。
すると息子が、自分の指を空にかざして、星と星をつないで星座を描き始めたのです。これはまさに、私たちが作っているゲーム「Gravity Weaver」で、星をなぞって星座の線を描く、あの遊びそのもの。画面の中の体験が、勝浦の本物の夜空で起きた瞬間でした。事前に星座早見盤やゲームで形を知っておくと強い、という話を、子ども自身が体で証明してくれた気がします。
そしてもう一つ、現地で本当に役立ったのが、スマホアプリのStellarium(ステラリウム)でした。スマホを空にかざすと、いまその方向にある星座の名前と形がリアルタイムで重なって表示される。「あの明るい星は何?」にその場で答えが出るので、星を見ながら星座を覚えるツールとして大活躍でした。星座早見盤で空全体の地図を頭に入れ、アプリでその場の答え合わせをする ── この紙とアプリの使い分けが、実際やってみるととても気持ちよかったです。
親子で流れ星、そしてさそり座は木に阻まれた
望遠鏡をのぞいていたそのとき、視野の外の空を、流れ星がシュッと一瞬横切りました。しかも私と息子、二人同時に。狙って見られるものではないぶん、暗い勝浦の空だからこそ拾えた、ちょっと特別なごほうびでした。流れ星は望遠鏡にもスマホにも写せない ── だからこそ「肉眼でたまたま」がいちばんの贅沢だと、あらためて思います。
一方で、うまくいかなかったこともあります。私が個人的に好きなさそり座は、この夜まったく見えませんでした。さそり座は日本からだと南の低い空にしか昇らず、今回のサイトは周囲を木立に囲まれていて、低い空がふさがれていたのです。
さらに、テントサイトのすぐ脇が炊事場で、その明かりが思いのほか明るい。せっかく暗い空を求めて来たのに、足元の光で目が慣れきらない。木立(低い空を遮る)と炊事場(手元を照らす光)で、二重に「場所取り」の大切さを思い知らされました。星は空の高さと空の暗さで見え方が決まる ── キャンプで星を見るコツに書いた「南が開けて、光を背にできる場所を選ぶ」を、まさに自分で体験した形です。次は、南が開けて明かりの少ない一角でリベンジします。
総評 ── 「子どもと使う最初の一台」としてどうだったか
一晩使ってみての、正直なまとめです。
◎ 良かったところ
- 軽くて、組み立て・設営が数分。難しい設定がいらない
- 上下・左右のどちらも微動ハンドルで細かく合わせられる。子どもでも目標を視野に入れて、ゆっくり追い込める
- 三脚が低い=子どもの背丈にフィット。多くの対象を子どもがラクに扱え、天頂付近も大人より子どものほうが対応しやすい
- ベガをきちんと導入できた達成感。最初の一台として十分
△ 気になったところ
- 三脚が低く、天頂付近の「狙い定め(導入)」は大人にはかがむ姿勢できつい(のぞくのは天頂ミラーで楽)
- 恒星は点にしか見えない(機種でなく望遠鏡全般の前提)
- スマホでのコリメート撮影は手強く、この夜は撮れなかった
総じて、「子どもと一緒に星を始める最初の一台」としては、very goodでした。月・明るい星・二重星などを、親子で気軽に楽しむには十分。何より、子どもが自分で操作して夢中になれたという一点で、我が家の選択は正解だったと思います。
そして、これは次回への宿題。今回はまだ、付属の低倍率アイピース(35倍)だけしか使っていません。次は高倍率(117倍)も試して、今回は見られなかった月、そして土星の環や木星といった惑星にも挑戦してみたい。リゲル60の本領は、むしろこれからだと思っています。もっとも8月は暑いので、少し涼しくなる9〜10月に、また空の暗い場所へキャンプに出かける予定です。さそり座のリベンジと、月・惑星、そしてスマホ撮影の宿題を抱えて。
そして、この望遠鏡で見た星空をきっかけに、息子は「夏休みの自由研究にしようかな」と言い出しました。街と暗い空で見える星の数を数えて比べる、あの驚きを研究にする ── そんな次の物語も生まれそうです。写真は撮れなかったけれど、それよりずっと大きなものが残った、いいファーストライトでした。
