実家の押し入れから、子どもの頃に使っていた星座早見盤(せいざはやみばん)が出てきました。丸い盤を2枚重ねて、くるくる回すとその日の星空が窓に出る、あれです。息子がさっそく回して遊んでいるのを見て、ふと「これ、今でも売ってるのかな」と検索したら ── ほとんど同じ見た目のものが、今も現役で棚に並んでいました。何十年も設計が変わらない道具というのは、それだけで少し感動します。

スマホの星座アプリが当たり前になった今でも、紙の早見盤には紙なりの強みがあります。電池がいらない。空全体の「地図」が一枚で頭に入る。そして何より、自分の手で日付と時刻を合わせる作業そのものが、星空の仕組みを教えてくれます。この記事では、初めて手にした人(と、その隣の子ども)に向けて、使い方をいちばん短い手順でまとめます。

星座早見盤ってなに? ── 星の「回る地図」

星座早見盤は、2枚の円盤を重ねた道具です。下側の円盤には夜空の星がぐるりと印刷されていて、上側のカバーには楕円形の窓が開いています。この楕円の窓が「地平線から上に見えている空」を表しています。

2枚の縁には目盛りが振ってあります。片方の縁には日付(月日)、もう片方には時刻。この2つを合わせて盤を回すと、窓の中に「その日・その時刻に見える星空」がぴったり現れる、という仕組みです。

円盤の中心にあたる点は、空が回る軸 ── 天の北極(北極星のすぐそば)です。星々はこの一点を中心にぐるぐる回っているので、早見盤も中心を軸にして回転します。

もう一つ大事な前提。日本で売られている早見盤の多くは、北緯35度前後(本州のあたり)を基準に作られています。北海道や沖縄では地平線の見え方が少しずれますが、星座を探す用途なら十分に使えます。

星座早見盤の2つの使い方ステップ 左:外側の日付の輪と内側の時刻の輪を合わせて盤を回す図。右:楕円の窓を頭上にかざし、見たい方角を下にする図。 ① 日付と時刻を合わせる 7月13日 21:00 外側の輪 = 日付 / 内側の輪 = 時刻 中心=北極星(回転の軸) 回す ② 頭の上にかざす 空の窓(見えている範囲) 北極星 ↓ 見たい方角(例:北)を下に ↓ 地図と東西が逆 (見上げるから)
使い方は2ステップ。まず外側の日付と内側の時刻を合わせて盤を回す。次に、見たい方角を下にして楕円の窓を頭の上にかざす。

使い方① 日付と時刻を合わせる

まずは室内でかまいません。盤に印刷されている「今日の日付」を、目盛りの「今の時刻」の位置に合わせて回す。たったこれだけです。

たとえば今夜(7月13日)の21時に星を見るなら、「7月13日」の目盛りを「21時」のところに合わせます。すると楕円の窓の中に、今夜21時に見えるはずの星座がずらりと並びます。窓からはみ出た星は、今は地平線の下 ── まだ昇っていないか、もう沈んでいる星です。

ひとつ注意点。日本には夏時間(サマータイム)がないので、時計そのままの時刻で合わせて大丈夫です。海外でサマータイム中に使うときだけ、1時間ずらして考えてください。

合わせ方の合言葉は「日付 × 時刻」。この2つさえ合わせれば、あとは窓に出た星がそのまま今夜の空です。難しい計算は一切いりません。

使い方② 見たい方角を「下」にして、頭の上にかざす

ここが、地図と星座早見盤のいちばん違うところです。地図は机に置いて見下ろして使いますが、早見盤は空にかざして見上げて使います。

外に出たら、まず自分が見たい方角を向きます。北の空を見たいなら北を向く。そして、盤の縁に書かれた「北」を自分の手前(下)に来るように持って、そのまま頭の上に持ち上げます。すると盤の星の並びが、目の前の実際の空の並びと重なります。南を見たいなら「南」を下に、というふうに、向いた方角を下にするのがコツです。

最初は「盤の上ではこの三角形が、空ではあの高さか」と、行ったり来たりして目が慣れていきます。明るい星や特徴的な形(夏なら夏の大三角)をひとつ手がかりに決めると、一気に読めるようになります。

なぜ東西が地図と逆なの?

早見盤をよく見ると、東と西が地図と反対に印刷されていることに気づきます。これは間違いではなく、「見上げて使う」ための正しい向きです。

地面の地図は上から見下ろすので、北を上にすると東は右、西は左になります。ところが空は下から見上げるので、同じ星の並びが左右反転して見えるのです。手のひらに描いた地図を、そのまま頭の上にかざしてひっくり返すところを想像すると分かりやすいかもしれません。早見盤は最初からその「見上げた向き」で刷ってあるので、頭上にかざせば実際の空とちゃんと一致します。

中心の星=北極星を軸に、空は回る

早見盤を使っていて面白いのは、時刻を少しずつ進めて盤を回すと、星たちが中心を軸にぐるりと回るのが見えることです。これはおもちゃの仕掛けではなく、実際の夜空で起きていることそのものです。地球が回っているので、星は1時間に15度ずつ、北極星を中心に反時計回りに動いていきます。

だから同じ星座でも、宵の口と夜更けでは傾きが変わり、季節が変わればまったく違う場所に見えます。北斗七星が季節で向きを変える話も、早見盤を数時間・数か月ぶん回してみると一目で腑に落ちます。中心の北極星だけがほとんど動かない ── それを実感できるのが、この道具のいちばんの学びどころです。

早見盤が「苦手」なこと

星座早見盤は万能ではありません。載っていないものが3つあります。

月・惑星は載っていない。星座は何百年も並びが変わらないので印刷できますが、月や金星・木星・土星といった惑星は、日ごとに星座の間を移動していきます。だから早見盤には描けません。「今夜あの明るい星は何?」という疑問には、早見盤だけでは答えられないことがあります(惑星がだいたい通る道=黄道が線で描かれている盤もあります)。

流星群の「流れ星」も予報できない。放射点の位置は分かっても、いつどこに流れるかは早見盤の担当外です。

緯度が大きく違う場所ではずれる。日本の盤を赤道直下や南半球で使うと、地平線の楕円が合わなくなります。旅先で本気で使うなら、その土地の緯度用の盤かアプリが要ります。

こうした弱点は、スマホの星座アプリがちょうど補ってくれます。アプリはGPSで今いる場所と時刻を自動で合わせ、月や惑星の位置も表示してくれます。全体像を頭に入れるのは紙の早見盤、その日の細かい答え合わせはアプリ、と役割を分けると気持ちよく使えます。

いろいろなタイプ ── 蓄光式・両面盤

早見盤にはいくつか種類があります。星が暗闇でぼんやり光る蓄光インキで刷られたものは、部屋の明かりを消すと1〜3等星がふわっと浮かび、実際の夜空の明るさ感覚に近づきます。子どもは暗い部屋でこれを光らせるだけで大喜びします。

また、表が北の空・裏が南の空に分かれた両面タイプもあります。1枚の丸い盤に空全体を押し込むと、南の低い空がどうしても歪んでしまうためで、北担当・南担当に分けることで見やすくしているわけです。

どのタイプでも、基本の使い方 ── 日付と時刻を合わせて、方角を下にしてかざす ── は同じです。我が家に出てきた昭和の盤も、今売られている盤も、そこは何も変わっていませんでした。

まず「形」を覚えると、夜空はぐっと読める

早見盤で今夜の空の全体像をつかんだら、次は個々の星座の形を覚える番です。とはいえ、星座の形は遠目だと意外と頭に残りません。

そこで少しだけ自分たちのゲームの話を。Gravity Weaver には30の星座がステージとして登場し、星をなぞって形を描く仕掛けになっています。星座の線を一度自分の指でなぞっておくと、早見盤の上の小さな図形と、実際の夜空の大きな並びが、頭の中でつながりやすくなります。星座図鑑で形とデータを確かめてから空を見上げる、という順番もおすすめです。

昭和から設計の変わらない紙の盤を、今度は息子が回している。道具はそのままでも、見上げる人が世代交代していく ── 星の道具のいいところだな、と思いながら、今夜も窓の中の星を数えています。