9月のキャンプの計画を立てながら、息子とこんな話になりました。
「キャンプで見たい星ある?」「なんだろう?」「お父さんは土星が見てみたいんだよね」「たしかに。あの輪っかが見てみたいね」
盛り上がったあとで、ふたりして同じ疑問にぶつかりました。——でも、夜空のたくさんの星の中から、どれが土星か、どうやって見分けるんだろう? 望遠鏡を向ける前に、まず土星を見つけられないと話になりません。調べてみたら、道具なしで使える見分け方がちゃんとありました。しかも拍子抜けするほどシンプルです。
合言葉は「またたかない星をさがせ」
夜空の星をじっと見ていると、多くの星はチカチカとまたたいています。明るさが揺れて、ときには色までちらちら変わる。ところが、その中にひとつだけ、まばたきもせずにじっと光っている星があったら——それはかなりの確率で惑星です。
恒星(自分で光る星)はまたたき、惑星はまたたかない。昔から星見の世界で使われてきた、いちばん手軽な見分け方です。
なぜ恒星はまたたいて、惑星はまたたかないのか
またたきの犯人は、星ではなく地球の大気です。頭の上の空気は、温度や密度のちがう空気のかたまりが常に流れて揺らいでいて、光がそこを通るとき、レンズのように進む方向がわずかに曲げられます。ゆらゆら揺れる水面ごしにプールの底のコインを見ると、形が揺れて見えるのと同じ理屈です。
では、なぜ惑星は平気なのか。ポイントは見かけの大きさです。
恒星 ── 何光年も先にあるため、どんなに大きな望遠鏡でもほぼ「点」。1本の細い光の筋が大気に揺らされると、その揺れがまるごと見えてしまう → チカチカ
惑星 ── 太陽系のご近所さんなので、肉眼では点に見えても、実はわずかに「面」の広がりがある。面のあちこちから届くたくさんの光の筋が、それぞれ別々に揺れて打ち消し合い、平均化される → じっと安定して見える
惑星の「面」は肉眼で円盤に見えるほど大きくはありません。でも、またたきを打ち消すにはそのわずかな広がりで十分——望遠鏡なしでは見えない差が、またたきの有無というかたちで肉眼にも表れているわけです。
ダメ押しの見分け方が、あと2つ
① 明るさが桁違い ── 金星は全天でいちばん明るい恒星シリウスの約20倍も明るく、木星もシリウスを上回ります。土星も1等星クラス。「なんだか明るすぎる星」はまず惑星を疑ってください
② いる場所が決まっている ── 惑星は太陽の通り道=黄道の近くにしかいません。月が通る道すじの延長線上だけ探せばいい、ということです。北の空のカシオペア座のあたりに惑星は絶対に現れません
この秋は、練習に最高のシーズンです
知識を仕入れたら試したくなるのが人情ですが、ちょうどいいことに2026年の秋の宵は絶好の練習場です。
日が沈んだら、まず西の低い空。ひときわ明るく、じっと光る星があれば金星です(宵の明星ですね)。次に東の空。日没の1時間後くらいに昇ってくる明るい星が土星——10月4日に衝(1年でいちばんの見頃)を迎える直前で、ほぼ一晩中見えています(9月の連休の夜空ガイドにも書きました)。
西でじっと光る金星、東でじっと光る土星。その間の空でチカチカしているのが恒星たち。一晩で「またたき判定」の練習が両方できます。
おまけ ── 低い空の星は、はげしくまたたく
ひとつ注意があります。地平線ぎわの低い星は、光が大気を斜めに長く通ってくるので、恒星も惑星も関係なくはげしくまたたきます。またたき判定が使えるのは、ある程度高く昇った星だと思ってください。
逆にこの「低空のまたたき」が名物になっている星もあります。冬の夜、南東の低空で赤や青にギラギラと色を変えながらまたたく全天一明るい恒星・シリウス。あれは大気のいたずらが見せる冬の風物詩です——冬の星座の話は、また改めて。
ちなみに、大気のまたたきは天文学者にとっては大敵で、ハッブルやジェイムズ・ウェッブのような望遠鏡がわざわざ宇宙に打ち上げられる理由のひとつは、大気の外に出ればまたたきが消えるからだったりします。
まとめ
• じっと光ってまたたかない星は、惑星。チカチカまたたくのは恒星
• 理由:恒星は遠すぎて「点」=大気のゆらぎがまるごと見える。惑星はわずかに「面」=ゆらぎが平均化される
• ダメ押し:惑星は桁違いに明るく(金星はシリウスの約20倍)、黄道の近くにしかいない
• 2026年秋の宵は西に金星・東に土星の練習日和。ただし低空の星はなんでもまたたくので高い星で判定を
これでキャンプの夜、たくさんの星の中から自信を持って「あれが土星」と言えます。あとは望遠鏡を向けて、あの輪っかが本当に見えるかどうか——結果はキャンプのあとで報告します。
