9月のシルバーウィークに、また家族でキャンプに行くことにしました。今度は千葉の館山。星がよく見える場所だと知っての選定です。予約を済ませた夜、息子とこんな話になりました。「今度こそ、さそり座見られる?」

実は7月のキャンプで、さそり座をとうとう見つけられなかった心残りがあるのです。9月の後半、夜空には何が見えるのか。リベンジは可能なのか。予習を兼ねて調べたことを、ガイドとしてまとめておきます。同じ連休に星を見に行く人の参考になればうれしいです。

まずは月から ── 連休の夜には、月がいます

星空の予習でいちばん最初に確認すべきなのは、実は星座ではなく月です。月明かりひとつで、見える星の数はまったく変わってしまうからです。

2026年のシルバーウィークは9月19日(土)〜23日(水・秋分の日)の5連休。土日でない敬老の日と秋分の日に平日が挟まれて5連休になるのは2015年以来11年ぶりだそうです。そして国立天文台の暦を引くと、9月19日がちょうど上弦(半月)で、月はそこから満月(9月27日)へ向かって夜ごと膨らんでいきます。つまり連休の宵の空には、必ず月がいます。

これは悪い知らせではありません。

半月すぎの月は、望遠鏡や双眼鏡でクレーターを見るには絶好の条件です(満月よりも半月のころが狙い目という話は以前書きました)。そして月は夜半すぎには沈むので、月が沈んだあとが本当の星空タイム。連休の前半ほど月が早く沈み、暗い空が長く楽しめます。

ちなみに連休最終日の9月23日は秋分の日。太陽が黄経180度を通過する日で、この「黄経」の話は処暑の記事に書きました。そして連休の直後、9月25日は中秋の名月です。

宵の空 ── さそり座のラストチャンスと、昇ってくる土星

日が沈んで空が暗くなったら、まず南西の低い空を見てください。そこに、赤い星アンタレスを心臓にしたさそり座が、地平線に沈みかけています。9月後半の宵は、さそり座を見られる今年ほぼ最後のチャンス。暗くなってから20時ごろまでの短い勝負です。西南西の視界が開けた場所を、明るいうちに探しておくのがコツです。

頭の真上には、まだ夏の大三角が主役の顔で輝いています。「秋なのに夏の星座?」と思うかもしれませんが、星座の季節は入れ替わりにたっぷり時間をかけるのです。

そして東の空。日没から1時間ほどたつと、ひときわ明るい星がひとつ昇ってきます。その正体は土星です。2026年の土星は10月4日に「衝(しょう)」──地球から見て太陽の正反対に来る、1年でいちばんの見頃──を迎えます。連休はその直前。宵に昇ってほぼ一晩中見えている、絶好の観察条件です。うちは家の望遠鏡を持っていくつもりです。環が見えたら、と今から楽しみにしています。

秋の星座さがしは「四辺形」から始める

夜が更けてくると、東の空にいよいよ秋の星座たちが姿を現します。秋の星空は派手な一等星が少なく、一見すると地味です。でも、探しはじめる目印がひとつだけあります。「秋の四辺形」──ペガスス座の胴体をかたどる、大きな四角形です。

9月下旬・21時ごろの東の空(模式図) 東の空に秋の四辺形(ペガスス座)が昇り、その左上へアンドロメダ座の星の列が続く。左手の北東の空にはW字のカシオペア座、その下に昇り始めのペルセウス座。右下の東南東の低空には土星。 北東 東 南東 カシオペア座(W字) ペルセウス座(昇り始め) 秋の四辺形(ペガスス座) アンドロメダ座 アンドロメダ銀河 M31 土星
9月下旬・21時ごろの東の空の模式図。星の位置・数は簡略化しています。実際の空では星座アプリや星座早見盤と合わせてどうぞ。

探す順番はこうです。

① 秋の四辺形 ── 東の空に、ぽっかり浮かぶ大きな四角。中に明るい星がほとんどないので、むしろ見つけやすい

② アンドロメダ座 ── 四辺形の左上の角から、星の列が2〜3個、左へ伸びていく。この列がアンドロメダ座

③ カシオペア座 ── 北東の空のW字。ここは迷いようがありません。カシオペア座です

④ ペルセウス座 ── 夜が更けると、カシオペアの下からペルセウス座が昇ってきます

じつはこの探し方の順路は、ただの便利な道順ではありません。この4つの星座は、ギリシャ神話のひとつの物語の登場人物たちなのです。

秋の空は、ひとつの神話でつながっている

むかし、エチオピアという国に、カシオペアという王妃がいました。カシオペアは自慢好きで、あるとき「私と娘の美しさは、海の妖精たちにもまさる」と言ってしまいます。これを聞いて怒ったのが海の神ポセイドン。海の怪物を差し向けて、国の海岸を荒らさせました。

困り果てた王ケフェウスが神託をあおぐと、返ってきた答えは残酷でした。「娘のアンドロメダを、いけにえに差し出せ」。姫は海辺の岩に鎖でつながれ、怪物を待つ身になります。

そこへ通りかかったのが、怪物メドゥーサを退治した帰りの英雄ペルセウス。ペルセウスは海の怪物を倒してアンドロメダを救い出し、ふたりはのちに結婚します。

秋の夜空には、この物語の登場人物がほぼ全員そろっています。王妃のカシオペア座、姫のアンドロメダ座、英雄のペルセウス座。図鑑には載せていませんが、王のケフェウス座も、海の怪物とされるくじら座も、ちゃんと秋の空にいます。そしてペガスス座の天馬ペガススは、ペルセウスが退治したメドゥーサから生まれたとされる、同じ物語の出身者です。

ひとつ豆知識を。「ペガススに乗って怪物と戦うペルセウス」の絵をよく見かけますが、古いギリシャ神話の伝承では、ペルセウスが使ったのは翼のはえたサンダルで、空飛ぶ馬に乗っていたわけではないようです。ペガススの騎手として語られるのは、別の英雄ベレロポンのほう。絵画などを通じて、あとの時代にイメージが混ざったといわれています。

キャンプの夜にこの物語をひとつ覚えておくと、星座さがしが「点の暗記」から「物語の配役さがし」に変わります。W字を見つけて「自慢好きの王妃がいた」、そこから姫を辿って、助けにくる英雄が昇るのを待つ──秋の星空の楽しみ方として、これに勝るものはないと思っています。

おまけ ── 250万年前の光を、肉眼で

アンドロメダ座には、もうひとつ特別なものがあります。アンドロメダ銀河(M31)。私たちの天の川銀河のおとなりの銀河で、距離はおよそ250万光年。肉眼で見えるものとしては、もっとも遠い天体のひとつです。

街なかでは無理ですが、空の暗い場所なら、アンドロメダ座の星の列の近くに、ぼんやりした小さな光のシミとして見えることがあります。月が沈んだあとの、空がいちばん暗い時間帯が勝負。見えたその光は、250万年前に銀河を出発した光です。1光年がどれだけ遠いかを思うと、めまいがしてきます。

まとめ ── 連休の夜のプラン

• 日没〜20時ごろ:南西の低空でさそり座のラストチャンス。視界の開けた場所で

• 宵:半月すぎの月のクレーターと、東から昇る土星(10月4日の衝直前・ほぼ一晩中見える)を望遠鏡・双眼鏡で

• 夜更け〜月没後:東の空の秋の四辺形から、アンドロメダ→カシオペア→ペルセウスと神話の配役さがし。空が暗ければM31に挑戦

• 連休最終日9/23は秋分の日、直後の9/25は中秋の名月

予習はここまで。あとは連休の館山の空が晴れてくれることを祈るだけです。さそり座リベンジの結果は、また報告します。