COLUMBA

はと座 ― おおいぬの足元を飛ぶ、ノアの箱舟の鳩

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Constellation artwork © Johan Meuris / Stellarium — Free Art License (recolored & repositioned for display)

略符
Col
最も明るい星
Phact (α Col)
観測時期
冬(北半球)
面積順位
54th
日本での見つけやすさ
★★★☆☆
南の低空にだけ上がる

概要

はと座は、冬の南の低い空、おおいぬ座とうさぎ座の南に横たわる小さな星座です。面積は約270平方度で88星座中54位。いちばん明るい星はα星ファクト(等級2.65)で、3等星が2つ、4等星が数個と星は少ないものの、東西に並ぶ星の列が鳩の体と翼、そこから南へ垂れる星が尾と見立てられ、南の空が開けていれば意外にたどりやすい形をしています。赤経5時から6時40分、赤緯マイナス27度からマイナス43度の範囲にあり、北はうさぎ座、東はおおいぬ座ととも座、南はがか座、西はちょうこくぐ座に囲まれています。ラテン語名の Columba はそのまま「鳩」の意味で、英語では the Dove と呼ばれます。

プトレマイオスの48星座には入っていない、比較的新しい星座です。16世紀末、オランダの地図製作者ペトルス・プランシウスが、それまでおおいぬ座の周辺で「どの星座にも属さない星」とされていた星々を集め、1592年の壁掛け地図に添えた小さな星図に鳩の姿として描いたのが始まり。旧約聖書のノアの箱舟から放たれた鳩にちなみ、当初は「ノアの鳩(Columba Noachi)」と呼ばれていました。1922年の国際天文学連合の第1回総会で、正式に88星座のひとつとして認められています。

小さな星座ながら中身は濃く、200万年以上前にオリオン大星雲のあたりから飛び出した「逃走星」μ星、冬の空ではめずらしい球状星団NGC 1851、約4,200万光年のかなたで中心部から星が爆発的に生まれている棒渦巻銀河NGC 1808、そして太陽系が進む向きの正反対の点「太陽向点の反対点」まで抱えています。ゲームでは、洪水のあとに残る霧を思わせる Nebula(減速雲)が主役の星座です。

見つけ方

1月から2月の午後9時ごろ、南の空に全天でいちばん明るい恒星、おおいぬ座のシリウスを見つけます。そこから南西(右下)へ握りこぶし2つぶん(約20度)ほど下ろした低い空にある3等星がファクトです。途中、おおいぬ座の後ろ足の先にある3等星ζ星(フルド)を過ぎれば、鳩の東の翼δ星はそのすぐ南です。オリオン座の足元にうさぎ座を先に見つけ、その真南へ視線を下ろす方法でも届きます。ファクトの赤緯はマイナス34度で、東京付近では南中しても高さ約20度、尾のη星(赤緯マイナス43度)にいたっては約11度しかなく、南の地平線まで開けた場所が必須です。北緯45度あたりが星座全体を見られる北限で、それより北へ行くほど尾のη星から順に地平線に隠れていくため、日本はこの鳩を無理なく見られる土地としてはかなり北寄りといえます。

星座線は、西のε星からα星ファクト、β星ワズン、γ星、東のδ星へと、ほぼ東西に星が連なって鳩の体と広げた翼を作ります。翼の中ほどにある4.4等の青白いγ星は、ワズンとδ星のあいだをつなぐ目印です。ワズンから南へ大きく下がったη星が尾で、星座絵ではくちばしにオリーブの枝をくわえ、翼を広げて飛ぶ鳩の姿に描かれます。全体の東西の幅は12度ほど、翼から尾までは10度ほど。冬の南の低空では、東のとも座の方向に天の川が流れていて、鳩はその西のふちを飛んでいるように見えます。

低空では大気に光が吸われるので、ファクトとワズンのペアを双眼鏡で見つけるところから始めるのが確実です。青白いファクトとオレンジ色のワズンは色の違いがはっきりしていて、いったん見つければ次からは肉眼でも追えます。高さの目安は「シリウスのおよそ半分」。東京でシリウスが南中する高さは約38度なので、その半分の高さを南南西に探せばファクトです。2月の後半になると宵の時刻には西へ傾き高度が下がるので、見るなら1月中が狙い目。逆に11月から12月なら、夜半すぎに南中するので、深夜に南の空を見る機会があれば探してみてください。

神話と文化

はと座の由来は旧約聖書「創世記」の大洪水の物語です。箱舟で洪水をしのいだノアは、水が引いたかを確かめるために、まずカラスを、次いで鳩を放ちました。最初の鳩は降り立つ場所がなく戻ってきましたが、7日後に放った鳩はオリーブの若葉をくわえて戻り、陸地が現れたことをノアに知らせます。プランシウスはこの鳩を星座にし、1598年の天球儀にも載せました。さらに1602年にウィレム・ブラウが作った天球儀では、隣の巨大なアルゴ座が「ノアの箱舟(Arca Noë)」と呼び替えられ、鳩は箱舟から放たれたところだという構図が空に描かれています。

1603年にヨハン・バイエルが星図「ウラノメトリア」に「Columba Noachi」として収録し、同じ年にフレデリック・デ・ハウトマンの星表にはオランダ語で「オリーブの枝をくわえた鳩」と記されました。一方で、アルゴ座のそばに置かれたことから、ギリシャ神話でアルゴ船の乗員が「ぶつかり合う岩」シンプレガデスを抜ける前に放った鳩と結びつける解釈もあります。予言者ピネウスの助言に従って放たれた鳩は尾羽を少し失うだけで岩を抜け、それを見たアルゴ船も全力で漕いで船尾の飾りを失うだけで通り抜け、岩はそれきり動かなくなったという物語です。聖書の鳩とギリシャの鳩、どちらも「船の行く手が開けたことを知らせる鳥」である点が重なります。

ファクトの名はアラビア語で「輪鳩(キジバトの仲間)」を意味する言葉に、ワズンは「重さ」を意味する言葉に由来します。中国の星座では、はと座の星は二十八宿の「井宿(せいしゅく)」に属し、ファクトとε星が「丈人(祖父)」、ワズンとλ星が「子」、κ星とθ星が「孫」という、家族三代を並べた星官になっていました。井宿は南の朱雀(すざく)を作る七つの宿の最初の宿です。日本では明治期に「コロンバ」と音のまま呼ばれ、1908年ごろには「鳩」という訳語が使われはじめ、1952年に日本天文学会が「はと」と定めています。

星の豆知識

ファクト(α Col) — 等級2.65、約270光年の青白いB型星です。スペクトルに水素の輝線が現れる「Be星」で、高速で自転する星のまわりを高温のガス円盤が取り巻いていると考えられています。視線方向に投影した自転の速さは秒速176キロにもなります。明るさが2.62〜2.66等のあいだでわずかに変わる変光星の疑いがあり、質量は太陽の4.5倍ほど。中国名は「丈人一」で、祖父の星官の1番星です。

ワズン(β Col) — 等級3.12、約87光年のオレンジ色のK型巨星で、半径は太陽の11倍あまり。質量は太陽と大差ないのに大きくふくらんだ、進化の進んだ星です。宇宙空間を秒速100キロ近い速さで動いている足の速い星でもあり、およそ10万年前には南天のがか座β星の系から2光年ほどのところを通り過ぎたと計算されています。中国名は「子二」で、子の星官の2番星です。翼の両端のε星(約280光年)とδ星(約220光年)もオレンジから黄色の巨星で、δ星は約869日の周期で見えない相手と回り合う分光連星です。

逃走星 μ Col — 5.2等と地味ですが、肉眼で見える数少ないO型星のひとつで、表面温度は3万度を超え、質量は太陽の約19倍。1.5日で1回転という速さで自転しています。ぎょしゃ座のAE星と正反対の向きに秒速200キロ以上で離れつつあり、両者の軌跡をさかのぼると、約200万〜250万年前にオリオン大星雲のトラペジウム星団付近で、連星どうしが衝突してはじき出されたと考えられています。オリオン座から北へ飛んだのがAE星、南へ飛んだのがμ星。AE星はいま、ぎょしゃ座の「まがたま星雲」を照らしながら猛スピードで通り抜けている最中です。かつてはおひつじ座53番星も同じ出来事の仲間と考えられていましたが、こちらはさらに古く、約500万年前にオリオン座の別の場所から飛び出したとみられています。

NGC 1851 と太陽向点の反対点 — NGC 1851は約4万光年の球状星団で、7.3等と冬の空では数少ない見やすい球状星団のひとつ(コールドウェル73番)。1826年にジェームズ・ダンロップがオーストラリアのパラマッタで発見しました。星団を囲む広い星のハローがあることから、天の川銀河に取り込まれた小さな銀河の核の名残りではないかとも考えられていて、近年の電波観測では星団の中に13個のパルサーが見つかっています。またはと座には、太陽系が天の川銀河の中を進む向きの正反対の点「太陽向点の反対点(アンタペックス)」があります。太陽はヘルクレス座のベガ寄りの方向へ、まわりの星々に対して秒速およそ13キロで進んでいて、私たちがはと座を見るとき、その視線の先は太陽系の「後ろ」にあたります。

Gravity Weaver での攻略

はと座は、ゲームでは5ステージ構成の星座。ファクト(α星)から始まり、ε星、ワズン(β星)、δ星、η星の順に、鳩の体から翼の両端、尾へと灯していきます。5つの星がそろうと、翼を広げて南へ尾を引く鳩の星座絵が盤面に浮かびます。星座の登場順はプレイごとに変わり、日本で見つけにくい星座ほどゲームでも出にくくなっています。

主役ギミックは Nebula(減速雲)。洪水のあとに残った霧のように、青緑色のガス雲が通り道に浮かび、太陽のかけらが中を通るあいだ速度をじわじわ奪います。雲を抜けた先で勢いを失って時間切れになりがちなので、雲に入る前に十分な速度をつけておくのがコツです。雲の手前に引力場を置いて振り回すように加速し、雲を斜めに短く横切る進路を選ぶと、速度の目減りを最小限に抑えられます。鳩がオリーブの枝を運んだように、雲の向こうまで勢いを届けましょう。

翼の両端(ε星・δ星)は東西に離れているうえ、最後の尾のη星はワズンから南へ大きく下がった長距離の投擲になります。後半に重力流とパルサーが加わるので、流れで距離を稼いでから、パルサーの拍に合わせてゴール手前の小さな引力場に受け止めさせる二段構えが安定します。η星への投擲は画面の縦方向に長いぶん、重力流がどちらへ流れているかを先に確かめてから引力場を置きましょう。雲・流れ・拍の三つが重なる終盤ほど、引力場の数を絞って一手ずつ様子を見るのが近道です。

はと座を本編で描いて、集めよう

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主な星

星名 バイエル符号 等級 スペクトル型
ファクト(Phact)α Col2.65B7 IVe
ワズン(Wazn)β Col3.12K1.5 III
δ Colδ Col3.85G7 II
ε Colε Col3.86K1 II/III
η Colη Col3.96K0 III
γ Colγ Col4.36B2.5 IV
κ Colκ Col4.37G8 II
ο Colο Col4.81K0/K1 III/IV
λ Colλ Col4.88B5 V
ξ Colξ Col4.97K1 III
エルクルド(Elkurud)θ Col5.00B8 IV
μ Col(逃走星)μ Col5.18O9.5 V

「Gravity Merge」の星座帳にはと座を灯そう

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